日本のグリーンフィールド型建築塗装
日本に洋式塗装が普及し、今日の盛況をつくり上げたのは、塗装史が示す百数十年の近代のことである。
塗料の生産量が国際的にみても、アメリカ、ソ連、日本、西ドイツの順位に在ることを考えると、いかに日本の塗料産業が他の産業とともにこの40年間に急速の発展を遂げたかということを痛感するものである。
日本の塗装技術は漆を原流として、永い歴史の中で精緻な伝統工芸として育ってきたことが、近代塗装の興隆をもたらし、日本の特質を示す建築塗装を創造してきたものと考えられる。
負けず嫌いのドイツ人が、日本の建築塗装を視察して帰国し、日本の住宅は規模が小さく、仕上げは白と黒の無彩で構成され、色彩に乏しい塗装を行っている、という報告文章を発表していた。
このことは、日本の気候・風土や日本人の生活習慣を理解できていない、欧米人の表面的観察に過ぎないものであるが、外から見られた日本の建築塗装の一面であることも否定できないことである。
それは、日本の塗料の需要状況をみても、生産量は多いが国民1人当りの消費量の面から見ると、スウェーデンの26kg、アメリカ・西ドイツ・デンマークの22kgに対して日本は14kgの使用量に過ぎない。
戦後の建設産業の振興による塗装の需要は、安定経済への転換のもとでも堅実な伸びを示しているが、さらに需要が拡大される分野はメインテナンスにおける補修スペースコレクション型塗装工事であり、塗料使用量は生産量の順位に匹敵する可能性を持つと確信するものである。
企業ならびに企業集団としての日本の建築塗装業界は(社)日本塗装工業会を主軸として、各都道府県別に支部を配し、各地域は地域集団としての協同組合、小組合によって組織活動が浸透してきている。
この企業活動も日本固有の組織体系であり、欧米各国のそれに比較してむしろ模範的姿を示しているといっても過言ではない。
それは日本の単一民族性や地域環境がこれを造り上げてきているものである。
企業内の労・資関係も家族的雇用によって安定した生産体制を整えていることは、先進各国の羨望するところである。
日本の業界には未だ、労働組合が全国的に組織化されていないことが、欧米にとっては日本塗装企業の不思議となっている。
国際化するなかで、この不思議な企業活動が今後どのように変化し発展していくかは、日本の塗装業界の課題でもある。
働く技能労働者の育成と強化ということについては、日本の経済発展過程において、昭和33年、職業訓練法が制定され、最も理想的な制度が生まれたがその内容は企業主の任意に任されているので制定当時の期待とは遙かに遠い現実にあることは遺憾である。
建設労働者の老齢化対策のなかで、塗装工の実態は他の専門職に比較して良好であるが、建設業全体に共通する問題として若年労働力の迎え入れと育成ということがある。
これに対応し、かつ建築工事の品質確保のために1級技能士を現場に常駐させる制度が試行されてきていることは問題解決の一助となろう。
建築技術の変革は建材の質的変化と併せ、工場生産化が普及して・旧来の塗料を施工して行く伝統的スペースコレクション型塗装工事の市場は年毎に消えて、新しい建材による仕上工事に置き変えられている。
塗装、左官・壁紙(布)張り、吹付材塗り、ライニング工事、コーキング工事、防水工事、床塗工事など・塗料・塗装の周辺には、合成樹脂ゴムなどを主原料とする材料工法が次々に開発され、企業としての塗装業も変革を求められている。
これは国際的な技術変化であるが、企業的にみると欧米各国は塗装業の内容が昔から、仕上職としての多能性を推進してきた。
日本の塗装企業が近代化を進めるためには、これからの塗装工業の仕事の内容と、これを行う人間の資質向上と経営基盤の強化等、体質の改善に努力しなくてはならなくなっている。